2008/7/18 金曜日

技術の命:光配線

Filed under: 光技術 — mizusawa @ 10:47:58

コンピュータや家電商品が機能が向上しながら小型化しているのは、電子部品とりわけ電子部品を構成する半導体回路の配線を細くする技術が次々に誕生しているからである。プリント基板や半導体の配線はアルミニュームなど金属の細い線を作成して、その線を電流つまり電子が集団で流れている。
このような細かい配線は印刷技術で作成して、半導体部品ではおもにシリコンつまり砂の成分で作ったシリコンの板の上に配線を描く。配線の間隔や幅はおよそ100ナノメートル、つまり1ミリメートルの10,000分の1の細さである。
金属の配線に電流を流すことで高速に信号を伝える努力は次々に成果を上げてきたが、エンジニアは更に高速に信号を伝えることのできる光配線を研究している。ところが光配線には配線を細くすることができない限界が従来から指摘されていた。
我々が目で感じる緑色の光は550ナノメートルの波長である。また通信で使われている光は目に感じることができない1,550ナノメートルである。そして限界は光はその波長よりも狭い空間で作ったトンネル(これを光導波路と呼ぶ)に入ることができない、という点であった。
光は振動しているので、時計の振子のように行ったり来たりする1回の間に光が進む距離を波長という。人に例えれば、光の身長であろう。子供のように小さければ小さいトンネルを通ることができるが、大人はその背丈にあったトンネルしか通ることができない。
通信用の光1,550ナノメートルで半導体の中の配線を光の信号に置き換えると、トランジスタなど半導体素子の大きさが光配線の10分の1程度なので、そもそも光配線を半導体に利用することは技術的に困難と考えられてきた。
ところが、光の身長を短くする技術が最近注目を集めている。なんと光が金属表面に多数存在する電子の集まりと影響しあうことで、光波長を10分の1以下に短くできるという。つまり、金属表面と空気やガラスなどの境界面で構成するトンネルを作れば、光の身長を10分の1程度に縮めて光信号を通すことができるというのだ。光信号は電気配線に比較して格段に高速な信号を伝えることができるので、この技術が実現できれば、コンピュータや通信技術の飛躍が期待できる。
鉄腕アトムやドラえもんを作る技術につながるかも知れない。

2008/6/26 木曜日

技術の命:ムーアの法則

Filed under: 光技術 — mizusawa @ 18:41:31

技術動向を長期にわたり予測することは大変重要である。同時に多くの技術者がある「技術予測」に沿って研究開発を進めることで、予測が現実になる。ムーアの法則は代表例だ。
最近IEEE会員に配布された雑誌Computerに紹介されていた図と記事を引用する。記事にはムーアの法則が最近成り立たなくなったと紹介しているが、ムーアの法則の根幹をなす考え方は今後のナノテクでも成立すると予想する。
Moore’s Law
偉大なGordon E. Mooreが1965年に予言したのは、2年ごとにIC回路のトランジスタ集積度が2倍になる、という法則だ。過去37年間この法則に従いプロセッサの能力が向上しDRAMのコストが低減した。
個人的な見解であるが、Moore自身が予言が的中したことにびっくりしているのではなかろうか。宗教の指導者とおなじように、衆目が認めるリーダの言葉に多くの技術者が動かされたのであろう。技術の世界でも、明確な目標を与えることがリーダにとって重要な責務である。
科学の世界は物質の基本を調べるために、物質を細かくしてその性質を調べ、さらに細かく調べる作業を繰り返してきた。半導体回路製造技術では、回路の線幅を小さくする製造技術を開発し、数年ごとに最新の技術に置き換えることで、熾烈な競争を繰り返して生きた。
ミクロな世界を覗く技術、ミクロな世界を作る技術を、ムーアの法則が発展させた。最近の環境問題は地球全体を科学でマクロに観察することで顕在化した社会問題である。ミクロな世界を作る技術が助け船を出してくれることを期待したい。

2008/6/10 火曜日

技術の命:通信コスト

Filed under: 光技術 — mizusawa @ 10:38:59

通信ネットワークは社会基盤である。通信コストが安ければ、ネットワークを活用して仕事の効率を向上する人が増加して、国民一人当たりの生産性が向上し、ひいては収入が増加する。ブロードバンドや携帯の普及のカギを握るのが通信コストだ。
2005年時点でITU(国際通信連合)が出した「ビット当たりのブロードバンド料金の各国比較」を紹介している記事を目にしたので、図を引用する。(引用:電子情報通信学会誌平成20年6月号487ページ)
cost.jpg
ビットとはディジタル情報を構成する単位で、8ビットで英数字1文字に相当する。ブロードバンドでは高速に情報を送ることが求められ、通信速度は毎秒送信可能なビット数で表す。図では一番コストの安い日本において、100kbit/s、すなわち一秒間に100,000ビット送信するコストが0.07USドルと表示している。およそ毎秒5000文字が7円のコストで提供されている計算だ。日本のブロードバンドは光ファイバで100メガビット毎秒の通信速度と紹介しているので、1000倍の違いがある。計算の前提条件には利用者が通常送受信する情報量を考慮するのでこの違いが発生しているのであろう。
特筆すべきは日本は世界でトップクラスのブロードバンド大国であることをこの図が示している。ADSLと光ファイバの普及がその後押しをしている。日本とパソコンや家電分野で競争している韓国、台湾とブロードバンドの首位争いを展開している。意外なことにヨーロッパは出遅れている。
あらゆる技術がそうであるように、ブロードバンドも双刃の刃である。使い方によって益にも害にもなる。携帯を小学生に持たせるかどうかで議論が盛んにおこなわれているが、人間には本来新しい技術を使いこなす能力があると信じたい。教育が大切である。

2008/5/5 月曜日

技術の命:加速する技術進歩

Filed under: 光技術 — mizusawa @ 23:03:16

技術進歩が加速されている。日本は第二次世界大戦後、敗戦のどん底から立ち直り経済大国の地位を得た。しかし、最近理科離れが指摘され、技術を担う若者が減少している。
技術進歩は新しい技術を積極的に吸収する人材を求めている。伝統的な技術に磨きをかける技術者も必要であるが、21世紀の技術進歩に日本が伍していくには、次々に出現する新しい技術に吸収し続け使いこなす頭脳集団が必要となる。
IEEE Computer(March 2008)に、加速する技術進歩をわかりやすく表現した図があったので、ここに引用させていただく。
技術が市場に広がる速度
図をクリックすると大きな画像で見ることができる。私は授業で情報ネットワークを教えている。その出だしの話が「電話は国策で設備を建設し明治から100年以上を費やして6000万台を達成した」である。次に話すことが、「最近では携帯電話が10年ほどで急成長して電話台数を追い抜き8000万台を達成した」である。
図は、加速する技術進歩を的確に表現している。情報産業の一翼を担った教育者として、若者の理系離れが日本の技術競争力を弱めると心配している。

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