2007/6/23 土曜日

通信簿

Filed under: 若者に話したい仕事の経験 — mizusawa @ 15:02:37

64歳になって、現在大学教授として授業をしているが、自分の人生で心に残る言葉を一番沢山経験したのは小学校時代だと思う。小学校では通信簿をもらう。通信簿の評価は子供心にも気になる。通信簿をもらって家に帰るとお母さんに渡す。母に成績のことでほめられたことは一度もなかった。漢字の書き取りの成績が悪くて何度も母にしかられたことは、だんだん記憶の外に遠ざかっているが、いまだに覚えている。父親と一緒にお風呂に入ったときに、「純一はクラスで何番くらいか?」と聞かれ、「たぶん真ん中程度」と答えたことは、はっきり記憶にある。子供心にも、緊張して答えたのであろう。
通信簿を渡すと、母親は担任の先生が通信簿に書き込んだ言葉を教えてくれた。「大器晩成」と書いてあった。担任の先生は時田先生であった。「大器晩成」の意味は、「大きな器は出来上がるのに時間がかかる」という意味である。私の小学校のときの成績に「大器晩成」と書いていただいたことで、母親は「勉強しなさい」としばしば言ったが、同時に「大器晩成」を私に期待したように思う。「大器晩成」は何度も私の通信簿に書いてあった。そして私は「大器晩成」の言葉が好きになった。自分自身の「大器晩成」を信じるようになったのであろう。
なまけ心がしばしば人生で顔を出したが、通信簿の「大器晩成」の言葉が、私を努力するように仕向けたことは間違いない。

2007/6/20 水曜日

行きたい会社が見つからないとき

Filed under: 若者に話したい仕事の経験 — mizusawa @ 13:52:16

学部3年生から質問を受けた。3年生はこれから就職活動のことを考えなければならない。就職活動に不安や心配を感じている。「いろいろ企業を受けても結局行きたい会社からは内定をもらえず、内定をもらった会社には行きたくないとき、先生ならどうしますか?」
企業は大学および大学院卒業の学生に広い門戸を開いている。もしどこの会社にも就職せずに数年経過して御覧なさい。フリータには企業は門戸を閉じている。その差はものすごく大きい。
一人前の大人なら、仕事をして給料をもらい、自分の生活、家族の生活を支えるのが、当たり前の人生である。「行きたい会社が見つからない」と思うなら、それは貴方が真剣に、就職や人生を考えていないからだ。努力して就職活動をして、自分は社会に役に立つ仕事をしたいと考えるなら、「行きたい会社が見つからない」ということはありえない。
給料は仕事をしてその対価としていただくものである。「行きたい会社がない」というのは「給料が要らない」と言うのと同じこと。稼がなければ、食べることができない。残されたのは餓死すること。学生の回答は「はい、餓死します」だった。

2007/6/19 火曜日

どうして科学??

Filed under: やさしい科学 — ak2889 @ 11:39:03

前の原稿で並べた質問事項への直接な答えではありませんが、どうして科学離れが言われ、科学が必要だと言われるのでしょうか。大学の科学の分野の学生の数は、むしろ多少増えているくらいです。それなのになぜ??
思いつく原因を、いくつか並べてみます。
1)高校での理系の希望者が減っている。(本当にそうなのでしょうか?大学での理系の学生の数はほとんど変わっていない、やや増加している、という話も聞きます。)
2)大学の理系の学生の(特に入学時の)レベルが相当低下している。(一部の学生はマニア的に詳しいものもいるのですが、それは昔から同じでしょうし、悪いことではないでしょう。)
3)大学院に進む学生が減っていて、大学院生の中で外国人が占める割合が高くなっている。すなわち、日本人の大学院生の数が減少している。
4)団塊の世代が定年に達したが、その技能を受け継げる若い人がいない。(どんな分野、どんな会社でも、技能をつぎつぎに次の世代に引き継いでいくことは、伊勢神宮の式年遷宮のように古来から考えられてきた基本的な事項ですが、それを怠っていたというのは筆者には理解できない状況です。)

1)と2)は関連したことで、理系の学生定員は減ってはいないが、大学入試の時に低いレベルのものまで合格にせざるを得ない、ということだと思われます。

5)実際のもの、具体的なものを知らない、あるいは実際のものを知ろうともしない人が増えている。物を設計する科学技術関係者にも、そういうひとが増えている。
6)非科学的なことを信じていると思われる人が多くなっている。これはテレビや雑誌などに「占い」がしばしば出てくることに典型的に現れていると思います。

筆者は、自然をよく知ること(自然をよく知ろうと努めること)、そして論理的に(合理的に)考えること、の二つが基本的に大事な点ではないかと思います。非常に基本的で、だれもが理解していることだと思うのですが、それが崩れつつあるのはないかと心配しています。

公害や原子力の事故などで、科学技術のマイナスの面がマスコミで大きく報道されたので、若い人が科学技術の分野に進まなくなった、あるいは、医療事故の報道が多くなって医者を目指す人数が減ったり、学校の教員の責任を追及するような記事が多くなって教員の希望者が減っている、ということも、いかにもありそうなことだと思います。(マスコミが悪いと言っている訳ではありません。マイナス面を報道することも大事なことです。世の中の皆さんが、ものごとにはプラス面とマイナス面の両面が必ず伴っているということを考えた上で報道の内容を判断することが大事なのだと思います。)(マスコミで悪者にされている分野にあえて入ろうとする若い人は、それだけ肝の据わった人で、有能な優れたひとだろうと思います。)

こう書いてくると、一番大事なことは、ものごとを論理的に考えるひとを増やすこと、若いみなさんに論理的に考えていただくようにすること、かもしれないと思います。

2007/6/16 土曜日

仕事の知識を増やす恥

Filed under: 若者に話したい仕事の経験 — mizusawa @ 21:46:30

20代か30代のことだったと思う。とある会議で分からない言葉「***」が出てきた。確かその当時の最新技術についての専門用語である。私は「***って何のことですか?」と質問した。会議に参加していた年配の40台の技術者が「何だ君は***も知らないのか!」と馬鹿にされてしまった。その40代の技術者の得意そうな顔を今でも思い出す。
仕事の打ち合わせで知らない言葉が出てくると、知っているふりで押し通すか、質問して教えてもらうか誰でも迷うと思う。時と場所に応じて使い分けても良いが、「質問して馬鹿にされる」というのは中々貴重な経験である。質問するのに勇気が要るし、馬鹿にされたらなおさら頭はものすごい勢いで回転して「こんちくしょう」と思う。従って、知らなかった言葉がしっかり頭の中に記憶される。
知らない言葉について質問して「知るは一時の恥」、知っているような振りをして会議をやり過ごし「知らぬは一生の恥」と言う。人生は気取っても始まらない。どうせ恥は山ほどかくものである。知らないことは質問して恥を沢山かいているうちに、周囲が君を見る目が変化してくる。何故か「あいつは知っているくせに質問をする」と周りが考えるのだ。君の知識が増えて後輩が「***って何ですか?」と質問したときには、このように答えよう。「君の質問はなかなか良い質問だ。ところで***は・・・」君は先輩として尊敬されるようになる。

2007/6/13 水曜日

科学ってなんだろう?

Filed under: やさしい科学 — ak2889 @ 11:05:50

多くのかたがたに科学を知っていただきたい、若いみなさんには科学の分野を目指していただきたい、ということが筆者の基本的な考えですが、さて、科学とは、と改めて聞かれると、これは案外、深遠な質問だと思います。
みなさんからの多くのご投稿を期待して、いくつかの質問(問題提起というほど硬いものではありませんが)を書いてみます。こういう質問もある、というご投稿も大歓迎です。
1)科学はいつから始まったのでしょうか。
2)18世紀の産業革命のあとから、急速に科学が発達したと思いますが、それはなぜでしょう。(産業革命以降に急速進んだ、というのは筆者の印象ですが、それ自体は正しいのでしょうか。)
3)筆者が知っている科学は「自然科学」ですが、「社会科学」という分野もあります。「科学」の定義、あるいは、「○○科学」と呼ばれている分野の共通点はなんでしょうか。
4)科学と戦争(軍事)、科学と宗教の関係は?(事実として、どんなことがあるのか。思想的なことは、この場の議論には含めないようにしたいと思います。)
5)自然の振る舞いを取り扱う科学と、計算機やデジタル装置のソフトのような自然には存在しないものを取り扱う科学とがあると思いますが、この2種類の科学は共通なのでしょうか、それとも違うものなのでしょうか。

筆者の簡単な答えの一例も書いてみようと思ったのですが、明日以降にします。みなさんの自由なご投稿を期待しています。設問の仕方自体が、誘導質問になってしまう可能性があるのですが、それをできるだけ避けて、みなさんのそれぞれの発想からのご投稿をおねがいします。   狐崎

結婚時期と人生設計

Filed under: 若者に話したい仕事の経験 — mizusawa @ 9:50:53

10年以上前に送り出した卒業生と同窓会で久しぶりに会った。学生時代に受けた印象とはうってかわって現役の社会人のたくましさを感じた。「家族は?」と聞くと「まだ一人です」という答えが何人もあった。ただ漫然と恋愛の機会が訪れるのではないかと待っているが、現実は仕事に忙しくて時間ばかりが過ぎていく、ということであろう。小学校から大学まで計画的に学業を積み重ねることと同じく、「結婚は人生で計画的に実行しなければならない最重要課題の一つ」である。30歳に結婚してすぐに子供が生まれたとして、子供が大学を卒業するのは50歳代前半となる。40歳に結婚したら60歳代まで子供の教育費用を稼ぎ出さなければならない。50歳代で幼児を抱えているカップルも知人に居る。
すでに子供3人の養育を終了したわが身は、60歳代半ばで孫の誕生を待っているが、なかなかである。現代の若者たちに、自分の人生で結婚について確かな計画を立て、次世代を担う子供たちをしっかり育てて欲しいと希望している。結婚にも、自ら考えた人生設計と、結婚相手を探す努力と、失敗を恐れずに求愛する勇気が必要である。

2007/6/9 土曜日

会社の品格の見分け方

Filed under: 若者に話したい仕事の経験 — mizusawa @ 10:02:53

今週授業で就職活動について質問を受けた。「先生、会社の良し悪しはどのように見分けるのですか?」。4年生の就職活動は終盤で、3年生に対する就職活動のセミナーが学内で開始されている。「通常は会社の経営に関する情報を調べたり、それからその会社に勤めている先輩を訪ねて話を聞くことだね。」「君が考える良い会社とはどんな会社を言っているかい?」学生ははっきりしたイメージを持っていないが、安心して仕事ができる会社を探したいらしい。「就職が決まった先輩になぜその会社を選んだかを質問したら、会社ビルの入り口が立派だったからという答えが返ってきたことがあったよ。」会社の良し悪し、つまり品格はビルのイメージよりは”人”である。
就職活動ではしばしば次のような話を聞く。学生は最初に内々定をある会社からもらって、それでも本命の会社の内々定の発表まではまだ時間がかかる。最初の会社は期限を切って、本人に「必ず就職するという約束をして先生の推薦書を持ってきなさい」と言う。学生は、本命の会社から内々定がもらえるかどうか分からないので、「どうしよう?」と悩む。学生には3種類のタイプがある。最初の内々定先に別の会社も就職活動中であることを告げる学生、最初の内々定先に就職を約束して本命に決まったら最初の会社に謝りに訪問する学生、最初の内々定先に就職を約束し本命が決まったらメールや電話でその旨伝える学生、である。
学生には次のように話したい。最初に内々定をもらった会社が期限を区切って就職の約束を迫ったら、「品格が高い会社」とは言えない。本命の就職活動をしていることを告げて、内々定を取り消されたら「品格の無い会社に勤めなくて良かった」と考えるのが正しい。

2007/6/6 水曜日

機銃掃射って知ってますか?

Filed under: 若者に話したい仕事の経験 — mizusawa @ 9:10:55

私が生まれた頃は第二次世界大戦中でした。東京が米軍の大空襲にさらされた頃です。両親は千葉に疎開しました。父は東京の会社に国鉄(省電?)総武線で通っていました。会社から帰宅する電車のなかで米軍戦闘機の機銃掃射にあいました。父はあわてて停止した電車の下に隠れたそうです。戦闘機は電車の線路に沿って飛行し、低空で列車めがけて機関銃を連射します。戦闘機がいなくなったと思って、電車の下から出ようとしたとき、父は隣の人が弾にあたって死んでいるのを見たそうです。
この話は私が小学生くらいのときに父から聞きました。その時父が被弾していたら、私は父無し子になって、満足な勉強もさせてもらえなかったかも知れません。戦争に負けた日本は、戦争に勝ったアメリカとほぼ対等の経済力をつけ豊かになりました。戦争に負けた恩恵で、日本はベトナムもイラクも経験せずに済んでいます。最近の憲法改正論議で、日本を代表するような大会社の幹部が、「日本のエネルギー石油を安全に確保するために憲法改正が必要なのだ」というようなことを発言しているのをテレビ番組で聞きました。「石油と父親のどちらが大切か?」と質問すれば「貧しくてもいい。父親が大切だ。」と皆答えると思います。「強い軍隊を持つことは不幸なことである」と第二次世界大戦後の米国の歴史が教えてくれています。

2007/6/5 火曜日

「青い地球を救う科学」(東京図書出版会、2007)

Filed under: やさしい科学 — ak2889 @ 15:01:40

副題 エネルギーと身近な科学
こういう本を出しましたので、ぜひ読んでください。ごく一部の本屋にしか置いてないようなので、アマゾンなどのインタネット書店で購入してください。もちろん、お近くの本屋に注文しても入手できます。
この本は、最初の投稿に書いた考えのもとに、本当の科学とは、こういうものです、ということを分かりやすく書いています。埼玉県のある高校での特別授業の内容をもとに、すこし追加しましたので、高校生だけではなく、大学生の1,2年や高専のみなさんにも参考になると思います。amazon(インタネット書店)で書名で検索すれば出てきますが、それをさらにクリックすると、筆者(小生)が書いた14項目の特徴、おすすめのポイントが出てきます。
この本を簡単に紹介するために作った1ページのパンフレットをこの原稿に添付しますので、見てください。(この下線部分をクリックすると添付資料が出てきます。)また、校正の回数が少なくて、申し訳けないことにいくつかの誤りがありました。正誤表もこの原稿に添付します。(出版社に送ってあり、いまは正誤表を挟み込んでお届けしているはずです)角度の度と秒をまちがったりしていますが、本の趣旨に影響するような誤りはありません。

単にならったことをよく記憶するだけではなく、本質を把握して考える科学者がこれからますます重要になります。自然をよく観察し、自然をよく知った、そして科学的な考え方をする若いみなさんの力を大いに期待しています。

なお、難しい科学を解説するのにこういう方法もある、という点で、いますでに科学の分野におられるみなさんにもご参考になるかもしれません。いろいろな人がいろいろな言い方で自分の経験、考えを若い世代に伝えていくことが非常に大事だと思います。この言い方が大多数の若い皆さんに理解していただきやすいのかどうかは、今後の反応を見ないと分かりません。でも、若い皆さんも、みんな同じではなくて、それぞれに分かりやすい言い方があるでしょう。ですから、どのような言い方でも、それに受信感度の高い若い人が必ずいるはずです。われわれ経験者の側から言えば、みんなで、いろいろな言い方で若いひとに語りかけてみようではないですか、というのが小生の提案です。

HTML convert time: 2.182 sec. Powered by WordPress ME