上司の仕事:売り込み転職

ある有名外資系会社の、それなりに出世した幹部と、転職について雑談したことがある。外資系企業に所属すれば、すぐに転職する意図がなくても、転職について常に意識しているようだ。幹部いわく、機会があれば常に、自分が転職先の会社にいくらで売れるか、つまり給与がどの程度になるか調べているという。転職斡旋会社を利用しているのかも知れない。
彼曰く、日本には外資系幹部として次々に企業をわたり歩いて、高給を稼いでいる人々が居る。外資系企業が日本に進出するときには、東京の米国大使館に人材探しの相談に来るという。そのような企業に狙いを絞って、米国大使館に履歴書を預けている人が数百人は下らない。だとすると高給取りの転職をするには、米国大使館に強い人脈を持つ必要がありそうだ。
ある外資系企業に自らコンタクトを取って、転職を希望しているので自分を採用してくれるかと問い合わせた。池袋周辺の立派なビルに入っていた会社で、指定された日時に訪問した。日本人の年配者が一人現れた。外国人ではなかった。
次に料亭で面接があった。個室であったが特段高級感がある場所ではなかった。面接した相手の日本人は、その外資系会社に転職したら上司になるかも知れない人物であった。転職の条件についてなるべく具体的に聞き出そうとするが、面接の場で給与の金額まで聞き出すことは大変難しい。また自分の役職も気になる。そこで質問した。
「私は御社に採用されたとしたらどのような役職名でしょうか?マネージャですか?」
すると返事があった。
「そうね。何でも君の好きな役職名を使えばいいよ。所長でも部長でも好きに選べばいいんだ。」
日本の大企業に所属していると、その中での肩書きは非常に重い。普遍的なものと思い込んでしまう。しかし一度自分の会社と利害関係のない外部に出れば、役職が全く意味の無い世界があることを、この言葉で悟った。
有力な人脈を利用せず、直接企業に自ら売り込む転職は、自分をディスカウントする結果になりそうだ。

英会話勉強の動機付け

最近では小学校から英語を勉強することが文部科学省で議論されているようだ。我々の世代は中学校から学校で英語を勉強し、高等学校では単語を暗記するのに豆単(まめたん)とよぶ小さな単語帳を片っ端から暗記する競争をした。
英会話を勉強し始める動機は人それぞれであろう。大学を卒業する頃、社会に出たら英会話の能力が給料の額を決める可能性があると予想して、英会話に取り組むのは一つの動機付けである。これからの社会では、外国企業が日本に多くなり、転職を余儀なくされたとき、英会話の能力は有利に仕事を見つけるための重要な手段である。
社内のつり広告には英会話学校の宣伝が多い。新聞を賑わす英会話学校の学費支払いのトラブルが示しているように、英会話を勉強しようとしても継続的に勉強するのはなかなか困難である。そこで学生時代の1年間を英米圏に留学して、一挙に英会話の能力を身につけようと考える学生が居る。
日本の大学は外国の大学との交流に積極的である。外国に留学中の期間にも単位が取得できるように、外国大学との単位互換制度を採用している例もある。日本に留学する外国人も沢山居る。学生相互の交流も盛んで、大変好ましい国際交流風景だ。
ある時理工学部4年で卒業研究中の学生が、大学院に進学する前に1年間カナダ留学をしたいと相談してきた。なるべく日本人が少ない地域に留学することをアドバイスした。帰国したときにはTOEICで850点を獲得したという。修士の2年間が終了して、念願どおり米国籍の日本企業に就職した。

上司の仕事:転職について考える

人生30台半ばまでが転職の最後のチャンスという噂がある。このような噂は、転職ビジネスで稼ぐ側の便利な勧誘の言葉と私は考えている。転職ビジネスは、一人転職を斡旋することで、その人の年収の半分から1年分を手数料として受け取ると言う。誰かが貴方に転職の話を持ちかけたとき、転職ビジネス側が何を考えているか慎重に判断しなければならない。転職する側よりも、転職させる側が儲かる仕組みなのだ。
安倍総理でなくても、サラリーマンは誰でも転職について考えることがある。安倍総理は病気を理由に総理を辞職したが、国会議員は続けるという。つまり月給は入り続けるということだ。辞職で世の中に迷惑を掛けたが、本人は生活を維持できる安全な転職である。
一方サラリーマンの転職は、一度判断を間違えれば、家族を路頭に迷わす可能性が高い。従って、会社に気づかれないように慎重に事を進めなければならない。30代から40台の働き盛りに、小さなきっかけで転職を考えることがある。自分が期待したような人事ポストでなかった、会社は自分を必要としているとは感じられない、と思うこともあれば、いやいや会社も苦しいから、次の人事で復活のチャンスを与えてくれるのではないか、ここは我慢のしどころだ、と考えたりする。
転職について考えるようになったとき、外部から電話がかかってくる。ヘッドハンティング会社を名乗り、「貴方のような優秀な人物に是非着て欲しいと言っている会社がある」と誘惑する。働き盛りのサラリーマンは当然自負心があるので、ヘッドハンティング会社のご指名があったということで、プライドをくすぐられる。早速ヘッドハンティング会社が指定した面接場所に赴く。
40歳になっていたあるエンジニアがヘッドハンティング会社の指定した場所に行った。都心の立派なビルであったが、どう考えても応接室以外にはろくにスペースも無いような事務所であった。ヘッドハンティングを依頼してきた会社は外資系だという。その外資系会社の事務所に行った。小さなオフィスで、日本駐在のアジア人が自分の後任を探していた。
その外資系の会社は、自分の会社と取引関係を望んでいた。日本でそのようなヘッドハンティングをしたら、会社間の取引が成立するはずもないことを知らない、アジア人マネージャであった。
あるときテレビの番組で紹介されていたヘッドハンティングの話である。自分が所属する会社が、外部のあぶないヘッドハンティング会社に依頼して、やめさせたい社員にヘッドハンティングを仕掛ける。深く考えることもせずにヘッドハンティングに応じた社員は、行った先の会社の地下室に一人で座る席を与えられ、やがて耐えられなくなって会社をやめたそうである。転職で厳しい社会の現実を知った時には、既に後戻りできなくなっている。

上司の仕事:窓際族の生活

大企業では時計の針のように正確に毎年異動が繰り返される。20歳代で採用され、30歳代は一人前に働き、40歳代は部下を持ち、50歳代になると人生の転機が訪れる。50歳代は会社のトップ、すなわち役員クラスの仲間入りできる人がごく僅か、残りはポストの関係で転出を余儀なくされる。
勤めていた会社から転出するとき、自己都合と会社斡旋の二通りがある。自己都合とは、会社の意向に係わらず本人が退職を申し出ることで、多くの場合退職金が減らされる。一方会社斡旋は会社が肩たたきをすることで、会社都合なのでそれに見合う退職金が支払われる。
大企業に勤めると、時期に若干の違いがあるものの、必ず退職の時期を迎える。人生にお別れがあるように、会社にもお別れがある。この時期人さまざまの人生模様が描かれる。大企業に勤め、ある程度の出世をしたものの、更に出世したいという未練が残るが、そうは行かないという現実に直面する。
いわゆる窓際族は退職予備軍である。大企業は経営に余裕があるので、あるいは社員を大切に扱っているという実績を作るため、一定レベルの出世を遂げた社員を窓際に配置する。特別な任務が与えられているわけではなく、部下もいない。強いて任務といえば、次の就職先を自ら探すことである。
新宿の高層ビルの31階に座っているある窓際族は、毎日定時に出社し窓の外を眺めている。目の前の高層ビルと高層ビルの隙間から遠くの空が見える。羽田に離着陸する飛行機に気がつく。ぼんやり眺めているうちに、飛行機と飛行機の間隔が3分であることに気がついた。さて本人は窓際からうまく離着陸できるのか不安である。
窓際の席は、一種の会社が与えたご褒美である。仕事をしなくても給与がもらえるので、これほどサラリーマンとして恵まれた職場はない。けれど本人の心中は穏やかではない。窓際に追い詰められたような気がしている。うまく窓際から脱出して次のチャンスをつかむことができるかどうか、それは20代から獲得した本人の努力、言い換えると、本人の能力を測る外部の人の評価で決まる。会社でどれだけ出世したかは関係ないのだ。(むろん会社が斡旋した先に再就職する場合は本人の能力を問わないこともあるが、本人が満足するような再就職先を会社が斡旋することはまれである。)

自民党総裁選:71歳と66歳の戦い

読売新聞社の記事では福田さんが圧勝するだろうと予想している。安倍さんが戦後生まれの初めての自民党総裁として登場して、その若さに期待したら国民から厳しい審判を受けた。若さゆえにそれこそ「切れた」感じで退陣を表明し、自民党は「若さ」から「老練」に舵を切ったように見える。
一般の会社では60歳代は既に退職しており、役員レベルがかろうじて現役で仕事を続けている。70歳代になれば、それこそお荷物として会社に居残りを続けている、かっての貢献者だけである。
一時自民党の総裁選に複数の候補者の名が挙がったが、政治の空白は許されない、というおまじないが効いたのか、福田さんと麻生さんの二人だけになってしまった。見事なまでの一致団結ぶりである。
50歳代の候補者がもう一人立候補したら印象が異なっていたろうが、現状は良い意味でも悪い意味でも昔の自民党が復活したなと感じる。投票権を持つ自民党議員が派閥のコントロールを無視して麻生さんに投票する、そのような投票結果が報道されれば、自民党の若手の動きが国民に見えてくる。総裁選の投票結果に注目したい。

テロとの戦い:国際的な約束か?日本国民への約束か?

国会が開催され、自衛隊の米軍への支援作業を継続するかどうかでニュースが騒いでいる。安倍総理は日本が対外的に約束したことなので、自分の政治生命を掛けて延長法案を成立させる意気込みであると伝えられている。
会社で仕事を進めるとき、自分の仕事を成立させるには周囲の人の協力が欠かせない。周囲の人が分かりやすい仕事の大義名分を説明することは不可欠である。同じような意味合いで、安倍総理は法案の延長を国際的な約束であると根拠付けている。
しかし、そのような大義名分をそのまま鵜呑みにする人は少ない。通常はその裏に隠された意図は何かと考える。会社の小さな世界であれば、自分の出世であったり、仕事の縄張りが裏に隠された目的だ。
安倍さんが「自分の進退をかけて法案の延長に努力する」と発言しているのは、「男らしい決断」と受け止めることもできるが、同時に「それほど追い詰められているのか?冷静な作戦を立てる知恵はないのか?」という印象もあろう。
安倍さんが「国際的な約束だから」という大義名分は、そのまま受け取る国民は少ないのではないか。むしろ「米国との約束だから」と発言した方が分かりやすい。
「国際的な約束だから、・・・日本国民が現在どのように考えているかを知る必要が無い」と言っているようにも聞こえる。解散して民意を問い、その後衆議院選挙で勝利してから法案の延長を行う、ことが男らしい堂々とした筋道だと考える。この手順に成功すれば、小泉さんを凌ぐ優れた自民党の総理として歴史に名前を残そう。

上司の仕事:忙しい部下に仕事を言いつける。

世界陸上が先週テレビで放送されていた。陸上は能力の判定が分かりやすい。早く走る人、高く飛ぶ人、遠くに飛ばす人が観客に一目瞭然である。
会社での仕事は、誰が優れた能力を発揮しているか、簡単に分からない場合が多い。一人ひとりの仕事の内容が異なり、定量的に把握しにくい。
ある上司の下に例えば5名の部下が居たとしたら、上司は重要な新しい仕事を誰に指示するであろうか。時間的に余裕のありそうな部下に仕事を頼んだ方が、部下の仕事が平準化されるので好ましいと考える場合もあろう。しかし、違う考え方もある。
とかく職場での仕事は、特定の人に集中しがちである。忙しい人に次々に仕事が降りてくる。周囲に比較的暇な部下が居ても、その人には適当な量の仕事しか与えられない。
忙しい人は、忙しいだけに仕事の処理が速い。暇な人が暇な理由は仕事が遅いからだ。上司から見ると、新しい仕事を暇な部下に頼んだら早く完成するかといえば、そうではない。忙しい人の方が仕事の段取りが良くて、テキパキこなすので結局は早く仕事が完成する。
入社同期が会社に複数居るとき、自分が忙しく、同期は暇そうなら、同じ給料をもらっている貴方は損をしていると感じるであろう。逆に自分が暇で同期の友人が忙しくて仕方ないとこぼせば、自分は得していると思うであろう。
凡人はこのように判断し、本人が気がつかない大きな判断違いをしている。若い人が新しい仕事に取り組むとき、それは本人の仕事をする能力、つまり脳を育てている。どのような分野でも仕事のパフォーマンスはプロと素人で軽く10倍違う。プロゴルファーとアマチュアゴルファーの腕の違いは会社の仕事にも言える。忙しい仕事に工夫を加えて、プロの能力を獲得する苦しみを味わうことは、何事にも代えがたい経験である。
給料が同じで、同期が忙しくて自分が暇だったら、貴方は損をしている。自分が忙しいときは、自分を鍛えているという意味で得をしている。将来の稼ぎを増やす準備をしている。無論、体を壊さないよう、体調管理も自己責任で行わなければならない。

上司の仕事:怒られ役を探す

上司は穏やかな人が部下の目からは好ましい。怒鳴り散らすような上司を見ると、自分が上司になったら「部下を怒鳴り散らすような上司には決してなるまい」と思う。職場には怒り方に違いがあるものの、上司が怒るのは当たり前で、上司にとっては仕事の一部である。
普段は穏やかで包容力があると多くの部下から信頼されていた上司が話していた。部下を叱ることは仕事として必要だ。怒ることで部全体に緊張感が高まる。ただ穏やかだけでは部下の仕事のやり方がだんだん緩くなる。
上司にとって、叱る相手の部下の選定も大切だ。部下にも色々な性格があって、その性格を無視して叱ると、本人が壊れてしまうかも知れない。そこで、優れた上司は、部下の中から叱る対象を慎重に選定する。叱られ役の部下が必要なのだ。
出来る上司は、皆がその様子を聞こえる環境で、叱られ役の部下に注意を与える。上司の意図は、叱られている当事者に注意を与えているのかも知れないし、そうでないかも知れない。周囲で叱られている様子を聞いている誰かの代わりに、叱られ役に注意していることがある。
叱られ役の部下は、上司にとって大切な部下である。上司が信頼して叱っているのであれば、その上司の出世に伴って部下も出世する。
上司に叱られたときは、叱り方で上司の意図と、その上司が人を動かす能力を冷静に判断できる。懸命な部下の知恵となる。

語学留学と就職

その昔の大学受験では、英語が苦手なので理系、数学が苦手なので文系というような暗黙の選択があった。最近の高校では1年頃、勉強ができない子供は理系受験を避けなさいという指導がされているようである。
英語に苦手意識をもっている学生は大学に入ってもその意識が抜けない。大学ではグローバル化の潮流に併せて、海外の大学と学生交流を積極的に行っている。学生が就職活動をするときに、英語に対する得意不得意が微妙に影響する。情報テクノロジー分野では外資系企業に人気が集まっているが、苦手意識のある英語が外資系企業への就職活動を躊躇させる。
数年前研究室の卒論生が私に個人的な相談に来た。大学院に進学するが、1年間休学してカナダへ語学留学したいという。なるべく日本人が少ないところへ語学留学するようにとアドバイスした。この学生は意思がはっきりしていて、親を説得して1年間の語学留学を決めた。
このような学生は珍しい。一定レベルの日本の大学に入れないから、米国やオーストラリアなどへ語学留学で子供を送り出す親もいる。留学帰りといえば、子供に少しは箔がつく。しかし子供は現地で日本人のグループに参加し、結局英語が話せないまま1年間が過ぎてしまう、そのような例が大半であろう。
カナダに留学した学生は1年後に日本に帰国し、本人の話ではTOEFLが800点以上となり、外資系の巨大企業に就職した。
高等学校で学ぶ英語が不得手でも、就職活動時に英語に苦手意識を持つ必要はない。それより積極的に語学留学を体験させたい。理系では専門分野の知識で仕事をするので、英語が流暢である必要はない。英語がたどたどしくても丁寧に説明すること、相手の話をしっかり聞き取ろうと努力する態度があれば、いずれ仕事で英語を使いこなしている。