我が家のエナが天国に行き、友人が愛犬追悼の辞を寄せてくれた。
一緒に生活したペットに深い愛情を寄せている。
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ポチありがとう
8月1日の真夜中過ぎ、小さな甘えた鳴き声を聞いたような気がした。
2日前からこもったきり、もう出てくることのできなくなった
地面の巣穴から今日はじめて聞いた声だった。
すっかり痩せて、かさかさになった毛艶のポチは
一昨日、お気に入りの巣穴の上のウッドデッキの上に寝て、私の
なでる手に反応して、小さく尾を振り、唯一自由に動く首を
まわしてこちらを見た。初めてこの庭に来て、小さな
庭の主となったとき、さびしそうに鼻を鳴らした小犬のとき
と同じように真っ黒な瞳だった。
手からしか食べられなくなった今週、玉子焼き
をおいしそうに食べたと、Bは残念そうに言った。
ドッグフードにも飽きっぽく、食欲がないのか
と思えば、違う銘柄に喜んで食いついたり、おっとりしている
がわがままな深窓のお嬢様だったけど、玉子焼きが
こんなに好きならもう少し前からあげればよかった。
甘えた鳴き声を聞いて、直ぐに巣穴に降りた。
床下の、体がすっぽり入る、すり鉢のような自作の寝床は
10年以上暮らした、ポチの終の棲家だった。
まったく不思議なことに、大雨の中でも毛皮が
ほとんど濡れない防水構造を自分で作り上げた。
床下しか使わなかった犬小屋に、体が動かなくなってから
ちょっとの間だけ、寝ていたけど、やはり自分の
寝床がよかったのか、最後はこのくぼみに抱かれる
ようにして寝ていた。
うす暗闇に手を伸ばすと、毛皮が触れた。名前を
呼んで、さすってみた。背中をゆすってみた。
もう動かなかった。2時間ほど前にBがひき肉を
手からたべさせたのが末期の食事となった。
ポチは、一度も人や動物を噛まなかった。
えさの残りを盗むカラスにさえ、わんとも言わず
見ていた。威嚇のうなり声を聞いたことがない。
例外はあった。
水道の検針にはは、野犬捕獲の道具のようなもの
を常に手にしているからなのか、いつも、激しく吼えか
けていた。犬という種族のDNAに書き込まれた
習性なのだろう。
同じ年の、猫のタマも、友達扱いだった。
通いの野良猫にもえさを黙って譲っていた。
ただし、人見知りで、散歩に出かけると
出会う犬には尾をたれ、伏目で遠くを逃げるように
通り過ぎるのが常で、深窓の令嬢そのままだった。
巣穴の下に埋葬してやることにした。
小さい世界だったけど、庭の主人として安住の場
として最もふさわしいだろう。
ちょっと舌を出し、目を少し開いて、ばつの悪そ
うな顔をしたまま、口元のチーズを、後で食べるよ
といいながら土の中に埋められていった。
散歩以外で、この庭から出たのは、予防注射と
一回だけの動物病院での手術、2回の網代旅行、
清里のロッジ、伊豆高原の孔雀とサルの来るコテージ
だけだった。しかし、庭をしっかり守ってくれた
のは、一家にとって本当に助かった。
黒い目と、不器用なお手、日向ぼっこ、たくましい
肩の筋肉、追いつけなくらい速い足、てこでも動か
ない腰の強い立ち姿、おとなしくて頑丈で、控えめな和犬
らしい和犬、日本で暮らす喜びを心から感じること
ができた。13年間の付き合いだった。
ポチありがとう。
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黒き目は 小犬の如し 老いて逝く
往く犬の 見上げる夏や 鳳仙花
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